高精度プレス金型の
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トップページ » 技術コラム » ジグ研削盤とは|プレス金型における重要性【現場が解説 】
2025.08.25
プレス金型の品質は、製品精度や不良率、さらには金型寿命にまで大きく影響します。その中でも「基準穴の精度」は、製品の位置決めやクリアランス制御などに直結するため、誤差が許されない領域です。近年、プレス製品の高精度化が進むなかで、「±0.001m以内」「面粗度Ra0.05以下」など、これまで以上にシビアな公差が求められるようになってきました。そこで活躍するのが、ジグ研削盤(ジググラインダー)です。放電加工やフライス加工に比べてより安定して高精度に仕上げることが可能です。本コラムではジグ研削盤とはどのような機械なのか、他の機械と比べてどのようなメリットやデメリットがあるのかご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
目次
ジグ研削盤とは、高精度な穴の内径加工に特化した研削機械です。ジグ(治具)でワークを位置決めした状態で、回転する砥石が穴の内周を精密に仕上げます。特徴的なのは、砥石の先端が揺動運動(チョッピング)をしながら、寸法公差をミクロン単位で調整できる点です。これは平面研削盤やフライス盤では実現が難しい領域です。 工具は平面研削盤とは異なり、先端が砥石になっています。
ワイヤー放電加工とジグ研削加工は、精密な穴加工に使用される代表的な方法ですが、それぞれの特性には明確な違いがあります。
ワイヤー放電加工は、電極となるワイヤーを用いて、通電による放電熱で金属を溶かして加工する方法です。非接触で加工するため、高硬度材や複雑形状の穴加工に適しています。◎メリット・非接触加工のため、バリや加工ひずみが発生しにくい・複雑形状や微細な穴加工が可能・段取りが比較的容易で、プログラムによる自動加工が可能△デメリット・面粗度はジグ研削加工に比べると劣る・放電加工を行うため変質層が発生する →ノックピンや入子を出し入れする際に徐々に変質層が剥がれ落ちて穴が広がってしまう。・磨きにより変質層を落とす必要がある →手加工が必要になり、機械精度で仕上げられない
ジグ研削盤は、丸穴を高精度に仕上げるための加工方法で、主に精密な位置精度・真円度が求められる穴加工に用いられます。◎メリット・ミクロン単位の高精度な真円度・寸法精度の仕上げが可能・現合加工が可能で、より細かな調整が可能 →圧入、軽圧入、スライドなど実際の具合確認しながら加工することが可能。・面粗度のよい研磨面が実現可能・変質層が発生しないので、磨きが不要で機械精度で仕上げることができる△デメリット・設備・段取りに技術が求められ、加工者の熟練度が品質に影響・丸穴の側面以外の加工にはかなりの工数がかかる・加工費がワイヤー加工に比べて高くなる場合があるジグ研削盤は、穴寸法精度のみならず、㎛単位の位置決め精度が得られる点で、他の工作機械と一線を画しています。
ジグ研削盤は、以下のような加工に力を発揮します。●ノック穴プレート同士の位置決めをするノックピンが入る穴。高精度な金型においてはノック穴にも±2㎛の高精度な穴加工が求められる。●ガイドポスト穴プレス金型の上型と下型の位置決めをする、ガイドポストが入る穴。金型の各パーツが高精度に作り込まれていても上下型の位置精度が出ていなければ高精度な加工はできないため、ガイドポスト穴にも±2㎛の高精度な穴加工が求められる。上記のような穴は製品精度に直結します。そのため、ジグ研削盤にて高精度に仕上げる場合があります。
当社の保有するジグ研削盤では条件にもよりますが、以下の加工が可能です。(実際の加工の場合は測定器の目合わせが必要になる場合があります。) ●穴位置精度 ~±1㎛ ●穴寸法精度 ~±1㎛ ●面粗度 ~Ra0.05当社ではジグ研削盤を5台保有しております。そのうちの1台をご紹介します。
設備情報メーカー :三井精機工業㈱機 種 名:ジグ研削盤【J350G】ストローク:X軸 500㎜ Y軸 300㎜テーブルサイズ:700㎜×350㎜
以下にジグ研削盤についてよくある質問についてまとめました。是非ご活用ください。
Q. 加工コストは高くなりますか?→ A. 般的には高めですが、その分、金型の寿命向上やトラブル削減によるトータルコストは下がります。Q. ジグ研削加工指定で加工を依頼することは可能ですか?→ A. はい、当社では可能です。ただし、加工品のサイズによっては対応できかねる場合もありますのでご希望の際は事前にお問い合わせください。Q. ジグ研削盤は加工工程のどの段階で用いるのですか?→ A. 仕上げ加工になるため、切削加工、熱処理、放電加工が終わった後に用いられることが多いです。
ジグ研削盤は、精密な穴加工や位置精度が求められる精密プレス金型において、製品バリの発生や不良品を出さないために必須の工作機械です。当社では、精度の高い金型製作を支える一環として、ジグ研削盤を戦略的に活用し、お客様の加工課題を根本から改善しています。ジグ研削盤による加工は、目に見えないミクロン単位の精度差が製品の不良や寿命に直結する場面でこそ真価を発揮します。精密プレス金型、金型部品加工でお困りの際は、ぜひ南雲製作所へご相談ください。
営業部 山﨑
2001年 南雲製作所入社。8年間の設備設計を経て、その後営業として活動。15年以上の営業歴の中で様々な課題を抱えるお客様をご担当させていただく。2023年から南雲製作所公式サイト上で「技術コラム」やダウンロードコンテンツを発信している。
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