技術コラム
Column
2025.06.24
製造業に携わる中で「プレス金型って何?」「どんな種類があるの?」と疑問に感じたことはありませんか?この記事では、プレス金型の基礎をわかりやすく解説します。また、「今は切削だけどプレスに工法転換したらどうだろう?」と思っている方も必見です。
詳しく知りたい項目がある場合には、詳細な記事にも飛べるようになっていますのでぜひ最後までご覧ください。
目次
Toggleプレス金型とは、主に金属の板を打ち抜いたり、曲げたり、絞ったりする際に使用する専用の道具です。「“主に”金属の板を打ち抜く」としたのは、プレス金型は金属の板のみならず、板材よりも薄い箔材や、樹脂、フィルムの加工など幅広い材料に対応できるためです。このように様々な製品の加工ができるプレス金型は、量産品の製造現場で必要不可欠な存在です。
ではなぜそれほど重要なのでしょうか?その答えは「Q(品質)・C(コスト)・D(納期)」の3要素をバランス良く実現できるからです。精密な金型を使うことで、製品の精度を安定的に確保でき、加工スピードも上がるため、製造コストの削減につながります。(もしも金型がなかったらすべて1つ1つ手作りしなくてはなりません。そうなると品質にばらつきが出て、手間がかかる分価格が上がるのも理解できますね。)
プレス金型の他にも樹脂成形金型や鋳造型、鍛造型などがありますがどれも目的は「QCD」の最適化となります。本コラムではその中でもプレス金型に焦点を当ててご紹介していきます。
プレス加工は、以下のような基本フローで行われます。
1.材料(主に金属板)をプレス機にセット
2.プレス機に取り付けた金型で加圧・加工
3.完成品または中間品を取り出し
この工程だけを見ると、プレス加工って簡単なんだと思われるかもしれませんが、一概に「材料をプレス機にセット」するといっても、電子部品など製品精度が高くなればなるほどシビアに材料の位置合わせを行う必要があったり、順送型の場合は真っすぐに材料を送らないといけなかったりと、難しいポイントも出てきます。
そして加工内容に応じて、次のような工程に分類されます。
・せん断(抜き)加工:材料を切断する、打抜く
・曲げ加工 :材料を所定の角度に折り曲げる
・絞り加工 :板材を立体的な形状に成形する
単純な形状であれば穴開けパンチのように1度せん断加工すれば製品が出来上がります。しかし、世の中には複雑に曲がった形状や、お椀のような立体的な形状など様々な製品が存在します。上記の加工内容を実現するためにプレス金型の中にも複数の種類があります。次の章で詳しく見ていきましょう。
\ 曲げ加工についてはこちらの記事をチェック! /
プレス金型は用途や生産方式に応じて、次のように分類されます。
1工程ごとに材料を手動で移動させる方式です。1つの工程だけで製品が完成する場合や、工程ごとに別の金型を用いる場合に単発型を採用します。順送金型やトランスファー金型に比べて比較的安価な場合が多いですが、作業効率はやや劣ります。
1つの金型内で複数の工程を順に行う方式です。材料は送り装置によって自動で移動し、1ストロークごとに別の加工が進行します。製品の完成まで自動で行えるため非常に効率的で、大量生産向きです。ただ、単発型に比べて高価な場合が多いです。また、単発型とは異なり、複数の工程を自動で加工するため、材料を真っすぐ送る技術も必要になります。高精度に加工する必要がある製品については、工程数が多ければ多いほど、ほんの少しの材料のずれが最終的にはとても大きなずれになる可能性があるからです。
工程ごとに独立した金型を使用し、ワーク(加工物)を搬送装置(ロボット)で移動させる方式です。単発金型がいくつも並んでいてそれを人の手ではなく、ロボットが移動させるというイメージです。順送金型に比べて製品形状に縛りが少なく、より複雑な形状(絞り形状)に対応することができます。ただし、単発金型、順送金型に比べて大規模な設備投資が必要になります。
プレス金型は、いくつかの重要なパーツで構成されています。ここでは特に重要となるパーツ3点をご紹介します。
【パンチ】
材料に力を加える部品で、材料に直接触れて切断する切り刃となります。電子部品や車載用の主要な小物部品のような精度が求められる製品の場合、パンチの公差は±2㎛の精度で作り込まれる場合もあります。
【ダイ】
パンチ同様、材料に直接触れて切断する切り刃で、高精度な製品の金型の場合はダイも±2㎛の精度で仕上げることもあります。
【プレート類】
プレス金型は様々な役目のプレートを重ねて構成されています。パンチ・ダイを保持する役割や、材料が動かないように押さえつける役割、プレス機に与える衝撃を緩和する役割などが挙げられます。特に高精度な金型になるとプレートの種類も多くなり、また製品に関わる主要なプレートは±2㎛の精度で製作する場合もあります。
各部品の精度や材質も製品の仕上がりに大きく影響します。プレス金型の部品精度以上に完成した製品の精度が出ることは絶対にありません。
\ 構造の詳細についてはこちらの記事をチェック! /
プレス金型を用いることで一体どのようなメリットがあるのでしょうか。
プレス金型を用いた場合と用いない場合を比較したメリット・デメリットをご紹介します。
高精度で再現性の高い製品加工が可能
加工スピードが早く、量産に適している
作業者による品質のばらつきが少ない
初期費用(設計・製作コスト)が高い
設計後の変更がしにくい
製品ごとに専用金型が必要になる場合がある
このようなメリット・デメリットを踏まえて本当に金型が必要な生産数量なのか、金型費用を回収できるほどの量産なのか検討する必要があります。
プレス金型は以下のような幅広い業界で活用されています。
・自動車部品(ボディ、ブラケット、内装小物部品など)
・情報通信機器(スマートフォン、パソコンなど)
・医療関連部品
その他にも様々な業界でプレス金型が利用されています。
どのような業界で、どのような割合で使われているのかについては日本金型工業会のこちらのサイトから最新の統計を確認することができます。
以下によくある質問とその回答、参考記事を掲載しました。
少しでもご参考になれば幸いです。
→一概にいくらということは難しいですが、こちらの記事でおよその価格帯や費用の削減方法をご紹介しています。ぜひご参照ください。
→各社の「こだわり」や「選ばれる理由」を確認することをおすすめします。南雲製作所のこだわりはこちらからご覧いただけます。
→切削加工からプレス加工へ、トムソン刃・ピナクル刃からプレス加工への工法転換についてのご相談も承っております。実際の製品形状や生産数量を伺えればプレス加工に転換するメリットが大きいかどうか、検討させていただきます。お気軽にご相談ください。
プレス金型は、製造現場のQCDを支える要です。正しい基礎知識を持っていれば、適切な種類の金型を選び、導入時のリスクも最小限に抑えることができます。
●自社はプレス金型を導入する必要があるのだろうか?
●プレス金型に投資しても大丈夫かな?
●シビアな精度が求められるこの製品、プレスでできるのかな?
このような疑問をお持ちの方はまずご相談ください。
南雲製作所があなたの会社のかかりつけ医になります。
営業部 山﨑
2001年 南雲製作所入社。8年間の設備設計を経て、その後営業として活動。15年以上の営業歴の中で様々な課題を抱えるお客様をご担当させていただく。2023年から南雲製作所公式サイト上で「技術コラム」やダウンロードコンテンツを発信している。
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