技術コラム
Column
トップページ » 技術コラム » 【型屋が徹底解説】トムソン刃・プレス金型の違い
2024.02.22
本コラムではトムソン刃金型とプレス金型を比較していきます。・業界の常識で今まではトムソン刃金型を使っていたけれども、もしかしたらプレス金型にした方がよいかも…?・今まではプレス金型だったけれども、トムソン刃金型の方が自社にとってはメリットが大きいかも…このように本コラムをきっかけにこれまでの工法を今一度検討し、生産性をさらに向上させるための検討材料の1つになればと思います。ぜひ最後までご覧ください。
※青文字をクリックすると用語集をご覧いただけます。
目次
木の板などに切り刃を差し込んで製作します。その刃を加工材に押し当てることにより、目的の形状に分離切断します。下型は金属、木、シリコンなど様々です。
切削加工や研削加工によりパンチやダイ、その他プレートを製作し、それらを金型として組み上げることによって打抜き加工や曲げ加工、絞り加工が可能になります。ストリッパプレート(しわ押えのプレート)があるので材料を真っ平にした状態での加工ができます。
2つの工法について5つの観点から比較してみましょう。〈製品精度〉トムソン刃金型は帯状の刃を木の板等に差し込んで型を製作します。そのためどうしてもどこかに刃のつなぎ目ができてしまいます。それに比べて、プレス金型は、形状を作り込むのでつなぎ目という概念はありません。まずこの点からトムソン刃金型よりもプレス金型の方が形状精度は良いと考えられます。また、プレス金型は材料を形状に打抜く際に、材料が動かないよう、ストリッパプレートで押えて加工します。一方でトムソン刃金型では基本的にストリッパプレートのような役割をするものがありません。そのため安定した加工が難しくなります。この点から、プレス金型の方がトムソン刃金型よりも平坦度、シャープな切れ味、製品の完成度が高いと考えられます。切り刃の硬さにも両者で違いがあります。トムソン刃金型は帯状の切り刃で形状を作り込むため、切り刃をたわませられるようにしておく必要があります。そのため切り刃に強力な焼き入れを施し、硬くすることができません。(硬度はHRC56程度)一方でプレス金型は各部品に焼き入れを施すことができるので、硬度を上げることができます。(SKD11でHRC60~62程度)それにより、プレス金型では硬い材料の加工が可能になります。製品精度:トムソン刃金型<プレス金型
〈形状の自由度〉トムソン刃金型の場合、木の板などに切り刃を差し込んで金型を製作します。そのため直角曲げや小さなR形状を作り出すのは難しいです。それに比べてプレス金型は形状をパンチ・ダイとして作り込むので様々な形状に対応することができます。形状の自由度:トムソン刃金型<プレス金型
〈切り刃寿命〉トムソン刃金型は目安として10万ショット程度で刃の交換となります。それに比べてプレス金型は板厚や材質によっては50万ショット程度でようやくメンテナンスといったケースもあります。この理由としては〈製品精度〉でも述べたように、焼入れの程度が関係しています。基本的には硬度が上がったほうが耐摩耗性には優れると考えられ、プレス金型はトムソン刃金型に比べて硬度を上げることができるので、切り刃の寿命も長くなります。切り刃寿命:トムソン刃金型<プレス金型
〈価格〉初期費用で比較するとプレス金型は、トムソン刃金型よりも高くなります。ただし、切り刃の交換頻度などを考慮すると交換作業の工数も含めたランニングコストについてはプレス金型の方が抑えられると考えられます。このように価格に関しては、どの程度の生産量を見込んでいるのかによってどちらがお得なのかが変わってきます。多品種少量:プレス金型<トムソン刃金型大量生産 :トムソン刃金型<プレス金型
〈リードタイム〉加工時間で比較するとトムソン刃金型のメリットが大きいです。精密なプレス金型の場合は複数のプレートやパーツが必要となり、それぞれに高精度な加工が必要となるためです。リードタイム:プレス金型<トムソン刃金型
ここまで2つの金型についてメリット・デメリットをご紹介してきました。これらを踏まえて結局どちらがいいのか?と思われる方も多いかと思います。選択の基準としては例えば「製品生産量」が挙げられます。生産量が比較的少ないようであればトムソン刃金型でも切り刃の交換なく生産可能である場合もあります。生産量が多い場合には切り刃交換時の費用や工数など諸々のコストを考えるとプレス金型を採用したほうが長期的にはコストメリットがあると考えられます。他にも基準として「製品精度」が挙げられます。高精度な加工が求められる場合にはプレス金型を採用することが考えられます。また選択の基準としては「製品の形状」も挙げられます。単純な形状の抜き加工であればトムソン刃金型でも対応可能です。一方形状が複雑であったり小さなR形状があったりする場合にはトムソン刃金型では対応することができません。その場合にはプレス金型の採用を検討することとなります。
いかがだったでしょうか。最終的にはコストパフォーマンスでどちらが自社に合っているのか、選択することになります。◎今はトムソン刃金型を使っているが、寿命を延ばして交換頻度を減らしたいと思っている◎トムソン刃金型の切り刃交換頻度が高いのでプレス金型での加工に工法転換して、工数を削減したいこのようなお悩みをお持ちの方は是非一度南雲製作所へご相談ください。
NEW
MOLD SHOP TECHNICAL CENTER.COM
コラムコンテンツや実際の事例、お客様の声を掲載しています。
CONTACT
精密プレス金型の設計製作に関してお困りの際にはお気軽にご相談ください。
受付時間:8:10〜17:10 定休日:土日