金型屋のつぶやき
2023年10月17日カス詰まりの原因とその対策
カス上がりと並び永遠の課題である「カス詰まり」。
カス詰まりはチョコ停を誘発するだけでなく、パンチやダイのチッピングや金型故障にも繋がります。
またカス上がりとは違って外部から見えないため、金型が破損してから気が付くことが多いです。
今回の記事ではそんな厄介なカス詰まりはなぜ生じるのか、
そしてその対策にはどのようなものがあるのかについてご紹介します。
またカス詰まりとカス上がりの対策はトレードオフの関係にあることが多いのでその点についてもご紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.カス詰まりとは
2.カス詰まりが生じる原因と対策
3.その他カス詰まり対策
4.カス詰まり対策とカス上がり対策の関係
5.カス詰まりをなくして効率的な量産を
1.カス詰まりとは
抜かれた材料(カス)がプレート内をうまく通過できずに詰まってしまう現象のことをいいます。
カス詰まりは金型の中で生じ発生初期は不具合が発生しないことも多く、発見が遅れ金型破損に繋がることも珍しくありません。
2.カス詰まりが生じる原因と対策
カス詰まりの原因としてどのようなことが挙げられるのか、またその対策にはどのようなことが考えられるのかについてご紹介します。
(1)ダイプレートに対し、バッキングプレートの位置がずれているためのカス詰まり
プレート同士の位置決めのため、ダイプレートのノック穴を基準とするが、バッキングプレートのノック部の穴径は公差が緩く大きめに設定されていることが多いためが、たつきがある。そのため下記の図のようにバッキングプレートが左右のどちらかに偏ってしまうとダイプレートとバッキングプレートの間に段差が生じ、そこにカスが詰まる。
・通常の場合
・バッキングプレートが右にずれた場合
【対策】
①バッキングプレートのノック部の穴を小さくして、カス落下時にズレによる詰まりがない形とする
②バッキングプレートのカス落とし穴を大きくして、多少ズレてもつまらないようにする。
プレートの各名称やノックピンについてはこちらの記事をチェック!
(2)加工油の取り残しによるカス詰まり
金型をしばらく使わない場合に加工油が金型についたままになっていると再度使用する際に固まった加工油にカスがへばりつき、カス詰まりの原因となる。
【対策】
しばらく金型を使用しなくなる際には金型についた油を綺麗に取り除く。
(3)バリの発生によるカス詰まり
溜まっているカスのバリが次のカスに押し付けられることにより、ダイの側面に張り出し、側圧が大きくなることでカス詰まりが生じる。
【対策】
定期的なメンテナンスによりバリの発生を抑える
基本的に製品に影響が出ないような適切なメンテナンスサイクルでパンチ・ダイを再研磨していればこのカス詰まりが生じることは少ない。
(4)磁気によるカス詰まり
ダイが磁気を帯びることによりカスがダイ内部の側面に付着しカス詰まりが発生する場合がある。パンチ・ダイの入れ子はサイズ的に脱磁しやすいが、ダイプレートはプレート全体の脱磁が必要となる。プレートが大きい場合は脱磁しにくく、カス詰まりの原因となることがある。
【対策】
脱磁器により徹底的に脱磁することが必要。
3.その他のカス詰まり対策 一例
2.で述べたようなカス詰まり対策の他には、パンチを深く侵入させて、ダイのニゲ(二番の加工)部分まで押し込む方法が考えられます。
この方法によれば確実にカスを落とすことができます。
またこの際に脇からエアーを吹き付けることにより効果を高めることができます。
ただし、デメリットとしては、パンチの侵入量が多い分、パンチの再研磨量が多くなり、パンチの寿命が短くなるという点が挙げられます。
このようなデメリットがありますが、他のカス詰まり対策に比べて効果が高いことから採用頻度も少なくありません。
・通常のパンチ侵入度合い ・逃げの部分までパンチが侵入した場合
4.カス詰まり対策とカス上がり対策の関係
カス上がり対策とカス詰まり対策はトレードオフの関係にあることも多いです。
カス上がりの原因とその対策についてはこちらの記事をチェック
トレードオフの関係になってしまう場合を1つご紹介します。
カス上がり対策としてダイ全周をだらすという手段が考えられます。カス上がり対策としてはダイ内部での保持力が高まることによりカス上がりを回避することができるのです。しかしその一方で側圧がかかりすぎると保持力が過度に高まりカス詰まりが生じてしまう可能性もあります。
5.カス詰まりをなくして効率的な量産を
いかがだったでしょうか。
カス詰まりで困っている、カス上がりを対策したらカス詰まりが起こるようになってしまった…
こんなお悩みをお持ちの方はお気軽に南雲製作所へお問い合わせください。
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